はなよりあめに
花より雨に

冒頭文

しづかな山の手の古庭に、春の花は支那の詩人が春風二十四番と数へたやう、梅、連翹(れんげう)、桃、木蘭、藤、山吹、牡丹、芍薬(しやくやく)と順々に咲いては散つて行つた。 明い日の光の中に燃えては消えて行くさま〴〵な色彩の変転は、黙つて淋しく打眺める自分の胸に悲しい恋物語の極めて美しい一章々々を読み行くやうな軟かい悲哀を伝へる。 われの悲しむは過ぎ行く今年の春の為めではない、又来(

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆43 雨
  • 作品社
  • 1986(昭和61)年5月25日