いちがつついたち
一月一日

冒頭文

一月一日の夜、東洋銀行米国支店の頭取某(なにがし)氏の社宅では、例年の通り、初春を祝ふ雑煮餅の宴会が開かれた。在留中は何れも独身の下宿住ひ、正月が来ても屠蘇(とそ)一杯飲めぬ不自由に、銀行以外の紳士も多く来会して、二十人近くの大人数である。 キチーと云つて、此の社宅には頭取の三代も変つて、最(も)う十年近く働いて居る独乙(ドイツ)種の下女と、頭取の妻君の遠い親類だとか云ふ書生と、時には妻

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 花の名随筆1 一月の花
  • 作品社
  • 1998(平成10)年11月30日