したいとみんぞく
屍体と民俗

冒頭文

* 栃木県足利郡地方の村々では、死人があると四十九日の間を、その死人が肌に着けていた衣類を竿に掛け、水気の断えぬように水をかけるが、これを『七日晒し』と云うている。俚伝にはこの水がきれると、死人の咽喉が乾いて極楽に往けぬから、こうするのだと云うているが、元より信用することの出来ぬ浮説である。私の考えるところでは、この民俗はかつて同地方に住んでいたことのあるアイヌ族が、残して往ったウフイと云う

文字遣い

新字新仮名

初出

「デカメロン 第一巻第五号」1931(昭和6)年

底本

  • タブーに挑む民俗学 中山太郎土俗学エッセイ集成
  • 河出書房新社
  • 2007(平成19)年3月30日