橘(たちばな)も恋のうれひも散りかへば香(か)をなつ かしみほととぎす鳴く (晶子) みずから求めてしている恋愛の苦は昔もこのごろも変わらない源氏であるが、ほかから受ける忍びがたい圧迫が近ごろになってますます加わるばかりであったから、心細くて、人間の生活というものからのがれたい欲求も起こるが、さてそうもならない絆(ほだし)は幾つもあった。 麗景殿(れいげいでん)の