しとそのでんとう
詩と其の伝統

冒頭文

何時誰から聞いたのだつたか覚えないが、かういふことを聞いたことがある。 山奥の村に、新しく小学校が設けられる。小学校では、毎年創立記念日に学童の作品展覧会が催される。尋常五年生は毎年関東地方の地図を出品するといふことになる。最初の年には三ちやんが一等賞になる。二年目には五※[#小書き片仮名ン、40-5]ちやんが一等賞をとる。かうして五六年目頃までは、年々、一等は一等でもその一等が目に見え

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文学界」1934(昭和9)年7月号

底本

  • 新編中原中也全集 第四巻 評論・小説
  • 角川書店
  • 2003(平成15)年11月25日