いしだんあがりのまち
石段上りの街

冒頭文

私の郷里は前橋であるから、自然子供の時から、伊香保へは度々行つて居る。で「伊香保はどんな所です」といふやうな質問を皆から受けるが、どうもかうした質問に対してはつきりした答をすることはむづかしい。併し簡単に言へば、常識的の批判からみて好い温泉である。ここに常識的といつたのは、自然や設備の上で中庸といふ好みを意味して居る。だから特別の新らしい趣味で、赤城や軽井沢のやうな高原的風望を好いといふ人や、反対

文字遣い

新字旧仮名

初出

1919(大正8)年

底本

  • 日本随筆紀行第五巻 関東 風吹き騒ぐ平原で
  • 作品社
  • 1987(昭和62)年10月10日