青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心 は下に鳴れども (晶子) 朱雀(すざく)院の行幸は十月の十幾日ということになっていた。その日の歌舞の演奏はことに選(よ)りすぐって行なわれるという評判であったから、後宮(こうきゅう)の人々はそれが御所でなくて陪観のできないことを残念がっていた。帝(みかど)も藤壺(ふじつぼ)の女御(にょご)にお見せになることのできないことを遺憾に思召