ちちのはか
父の墓

冒頭文

停車場(ステーシヨン)から町の入口まで半里位(ぐらゐ)ある。堤防になつてゐる二間(けん)幅(はゞ)の路(みち)には、櫨(はぜ)の大きな並木が涼しい蔭(かげ)をつくつて居(ゐ)て、車夫の饅頭笠(まんぢうがさ)が其間(そのあひだ)を縫つて走つて行く。小石が出て居(ゐ)るので、車がガタガタ鳴つた。 堤防の下には、処々(ところ〳〵)に茅葺(かやぶき)屋根が見える。汚ない水たまりがあつて、其処(そ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「趣味 第4巻第4号」易風社、1909(明治42)年

底本

  • ふるさと文学館 第五〇巻 【熊本】
  • ぎょうせい
  • 1993(平成5)年9月15日