そうわ
挿話

冒頭文

一 道太(みちた)が甥(おい)の辰之助(たつのすけ)と、兄の留守宅を出たのは、ちょうどその日の昼少し過ぎであった。彼は兄の病臥(びょうが)している山の事務所を引き揚(あ)げて、その時K市のステーションへ著(つ)いたばかりであったが、旅行先から急電によって、兄の見舞いに来たので、ほんの一二枚の著替(きが)えしかもっていなかったところから、病気が長引くとみて、必要なものだけひと鞄(かばん)東

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1925(大正14)年1月

底本

  • 日本文学全集 8 徳田秋声集
  • 集英社
  • 1967(昭和42)年11月12日