あたらしきそせん
新らしき祖先

冒頭文

一 或(あ)る年の、四月半ばの或る晴れた日、地主宇沢家の邸裏(やしきうら)の畑地へ二十人ばかりの人足が入りこんで、お喋舌(しやべり)をしたり鼻唄(はなうた)を唄つたりして賑(にぎや)かに立働いてゐた。或る者は鋤(すき)を持つて溝(みぞ)を掘り、或る者はそこから掘上げられた土を運んで、地続きになつてゐる凹(くぼ)みの水溜(みづたまり)を埋めてゐ、また或る者は鍬(くは)の刃を時々キラキラと太

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新潮」1917(大正6)年10月号

底本

  • 現代日本文學大系 49 葛西善藏 嘉村礒多 相馬泰三 川崎長太郎 宮路嘉六 木山捷平 集
  • 筑摩書房
  • 1973(昭和48)年2月5日