たんざくのきゃく
たんざくの客

冒頭文

大正のいつごろであつたか、大森新井宿で私はサラリーマンの家の平和な生活をしてゐた時分、或る日奇妙なおじいさんが訪ねて来た。どんな風に奇妙なのか、ただ取次に出た少女が奇妙なおじいさんと言つた。おじいさんは名も言はずただ一枚の短冊を出して、これを奥さんにお目にかけて下さい、用向きもそこに書いてありますと言つたと彼女が取り次いだ。その短冊にはよく枯れた字で書いてあつた「たづね寄る木の下蔭やほととぎす鳴く

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日