たかのいど
鷹の井戸

冒頭文

今は世にないアイルランドの詩人イエーツが書いた舞踊劇の一つに「鷹の井戸」といふのがある。その鷹の井戸がこの世にあるとしたら、どの辺にあるのだらうか? 詩人の言葉を借りてみよう。 「はしばみの枝々うごき 日は西にしづむ 風よ 潮かぜよ 海かぜよ いまは眠るべき時なるを なにを求めてさまよひ歩く」 その西に沈む夕日も見られて、潮風に吹きさらされた小さい島である。岩

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人朝日 第三巻第八号」朝日新聞社、1948(昭和23)年8月

底本

  • 燈火節
  • 月曜社
  • 2004(平成16)年11月30日