ねこはち
猫八

冒頭文

一 「おい、大将」と呼びかけられて、猫八(ねこはち)は今まで熱心に読み耽(ふけ)ってた講談倶楽部(こうだんクラブ)から目をその方に転じた。その声ですぐその人だとは分ってたので、心易(こころやす)い気になって、「いよう、先生!」わざと惚(とぼ)けた顔つきをしてみせながら、「よくこの電車でお目にかかるじゃアございませんか——さては、何かいい巣でもこッちの方にできました、な?」「なアに、巣鴨の巣、さ!」

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪毎日新聞」1918(大正7)年9月~10月

底本

  • 日本文学全集13 岩野泡鳴集
  • 集英社
  • 1969(昭和44)年4月12日