さいごのばんさん
最後の晩餐

冒頭文

ふいと見た夢のように私は幾度もそれを思い出す。私はその思い出の来る心の青い谿(たに)そこを幾度となくのぞき見してみる、まばたきにも、虹のひかりにも、その思い出は消えてしまう。それが私の霊の中から来る翼ある栄光(ひかり)であるか、それとも、幼い日に起った事であったか、よく見極めようとして近よる時——それは、昼のなかに没するあけぼのの色のように、朝日に消える星のように、おちる露のように、消えてしまう。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • かなしき女王 ケルト幻想作品集
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2005(平成17)年11月10日