さんけいにいくるひとびと ――いきるために――
山谿に生くる人々 ――生きる為に――

冒頭文

何たる事であろう。 大山は、大山の兄の死を待っていたのだ。という事を十数年後の今になって、ハッキリ知ったのである。 大山は、その二人の子供が死んだ、という知らせを受け取ったのは、木曽川の落合川の発電所で働いている時であった。 そして今、十数年後、木曽駒ヶ岳、恵那山などの山によって距てられる、天龍河畔の鉄道工事場で、今度は叔母からの通信で、兄が朝鮮で死んだ、ということを知ったのである。

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造 第十六巻十一号」1934(昭和9)年10月1日<br>「改造 第十七巻一号」1935(昭和10)年1月1日

底本

  • 葉山嘉樹 短編小説選集
  • 郷土出版社
  • 1997(平成9)年4月15日