こっきょう
国境

冒頭文

一 ブラゴウエシチェンスクと黒河を距(へだ)てる黒竜江は、海ばかり眺めて、育った日本人には馬関と門司の間の海峡を見るような感じがした。二ツの市街が岸のはなで睨み合って対峙(たいじ)している。 河は、海峡よりはもっと広いひろがりをもって海のように豊潤に、悠々(ゆうゆう)と国境を流れている。 対岸には、搾取(さくしゅ)のない生産と、新しい社会主義社会の建設と、労働者が、自分た

文字遣い

新字新仮名

初出

「戦旗」1931(昭和6)年2月

底本

  • 日本文学全集44
  • 集英社
  • 1969(昭和44)年10月11日