ひんみんくらぶ
貧民倶楽部

冒頭文

六六館に開かるる婦人慈善会に臨まんとして、在原伯(ありわらはく)の夫人貞子(ていこ)の方(かた)は、麻布(あざぶ)市兵衛町(いちべえちょう)の館(やかた)を二頭立の馬車にて乗出(のりい)だせり。 いまだ額に波は寄らねども、束髪に挿頭(かざ)せる花もあらなくに、青葉も過(すぎ)て年齢(とし)四十に近かるべし。小紋縮緬(ちりめん)の襲着(かさねぎ)に白襟の衣紋(えもん)正しく、膝(ひざ)の辺(あた

文字遣い

新字新仮名

初出

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

底本

  • 泉鏡花集成2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年4月24日