さんにんのほうもんしゃ
三人の訪問者

冒頭文

「冬」が訪ねて来た。 私が待受けて居たのは正直に言うと、もっと光沢(つや)のない、単調な眠そうな、貧しそうに震えた、醜く皺枯れた老婆であった。私は自分の側に来たものの顔をつくづくと眺めて、まるで自分の先入主となった物の考え方や自分の予想して居たものとは反対であるのに驚かされた。私は尋ねて見た。 「お前が『冬』か。」 「そういうお前は一体私を誰だと思うのだ。そんなにお前は私を見損なって

文字遣い

新字新仮名

初出

「開拓者」1919(大正8)年1月

底本

  • 世界教養全集 別巻1 日本随筆・随想集
  • 平凡社
  • 1962(昭和37)年11月20日