のみ

冒頭文

蚤という昆虫は夏分になると至るところに居るが、安眠を妨害して、困りものである。 生れ故郷の村にも蚤は沢山いたが、東京という大都会には蚤なんか居ないだろうと想像して、さて東京に来てみると、東京にも蚤が沢山いた。 それは明治二十九年時分の話で、僕は浅草の三筋町に住んでいた。その家(浅草医院といった)の診察室に絨緞が敷いてあったが、その絨緞を一寸めくると、蚤の幼虫も沢山つかまえること

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆18 夏
  • 作品社
  • 1984(昭和59)年4月25日