しょくどうらく はるのまき
食道楽 春の巻

冒頭文

緒言 小説なお食品のごとし。味佳なるも滋養分なきものあり、味淡なるも滋養分饒(ゆたけ)きものあり、余は常に後者を執(と)りていささか世人に益せん事を想(おも)う。然(しか)れども小説中に料理法を点綴(てんてい)するはその一致せざること懐石料理に牛豚の肉を盛るごとし。厨人(ちゅうじん)の労苦尋常に超(こ)えて口にするもの味を感ぜざるべし。ただ世間の食道楽者流酢豆腐(すどうふ)を嗜(たしな)

文字遣い

新字新仮名

初出

「報知新聞」1903(明治36)年1月3日~3月30日

底本

  • 食道楽(上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2005(平成17)年7月15日