おすえのし
お末の死

冒頭文

一 お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ〳〵した。 「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」 お末は朋輩にこんな物の云ひ方をした。十四の小娘の云ひ草としては、小ましやくれて居るけれども、仮面(めん)に似た平べつたい、而(そ)して少し中のしやくれた顔を見ると、側で聞いて居る人は思はずほゝゑませ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「白樺」1914(大正3)年1月

底本

  • 三代名作全集・有島武郎集
  • 河出書房
  • 1942(昭和17)年12月15日