まなつのゆめ
真夏の夢

冒頭文

北の国も真夏のころは花よめのようなよそおいをこらして、大地は喜びに満ち、小川は走り、牧場の花はまっすぐに延び、小鳥は歌いさえずります。その時一羽(わ)の鳩(はと)が森のおくから飛んで来て、寝(ね)ついたなりで日をくらす九十に余るおばあさんの家の窓(まど)近く羽を休めました。 物の二十年も臥(ふ)せったなりのこのおばあさんは、二人(ふたり)のむすこが耕すささやかな畑地(はたち)のほかに、窓

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 一房の葡萄
  • 角川文庫、角川書店
  • 1952(昭和27)年 3月10日発行