うおとはえのしゅくじつ
魚と蠅の祝日

冒頭文

コラムは三日のあいだ断食した。口に入れるものとては、あけがたにひと口の割麦、ひるに一片の黒パン、日の入る頃に藻草のひと口といっぱいの泉の水、それだけであった。三日の夜、コラムの部屋にオランとキイルが来た。コラムは跪(ひざまず)いて一心に祈っていた。部屋には、かすかにささやくコラムの脣(くちびる)の音と、土を塗った壁の上に一疋の蠅がいて物うげにうなっている声と、それよりほかに音もなかった。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • かなしき女王 ケルト幻想作品集
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2005(平成17)年11月10日