ばくせきざんそぞうのしさするもの
麦積山塑像の示唆するもの

冒頭文

麦積山(ばくせきざん)の調査が行なわれたのは四年ほど前で、その報告も、すぐその翌年に出たのだそうであるが、わたくしはついに気づかずにいた。だから名取洋之助(なとりようのすけ)君が撮影して来た写真の一部を見せられた時には、突然のことで、どうもひどく驚かされたのであった。それは麦積山そのものが思いがけぬすばらしさを持っていたせいでもあるが、またそのすばらしさを突然われわれの目の前に持って来てくれた名取

文字遣い

新字新仮名

初出

名取洋之助「麦積山石窟」岩波書店、1957(昭和32)年4月20日

底本

  • 和辻哲郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年9月18日