てんこう
転向

冒頭文

一 過去の生活が突然新しい意義を帯びて力強く現在の生活を動かし初めることがある。その時には生のリズムや転向が著しく過去の生活に刺激され導かれている。そうしてすべての過去が「過ぎ去って」はいないことを思わせる。機縁の成熟は「過去」が現在を姙まし、「過去」が現在の内に成長することにほかならなかった。今にして私は「過去を改造する意欲」の意味がようやくわかりかけたように思う。 「過去」の重

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1916(大正5)年5月

底本

  • 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年4月10日