しょうぶごと
勝負事

冒頭文

勝負事ということが、話題になった時に、私の友達の一人が、次のような話をしました。 「私は子供の時から、勝負事というと、どんな些細なことでも、厳しく戒められて来ました。幼年時代には、誰でも一度は、弄ぶにきまっている、めんこ、ねっき、ばいなどというものにも、ついぞ手を触れることを許されませんでした。 『勝負事は、身を滅ぼす基(もと)じゃから、真似でもしてはならんぞ』と、父は口癖のように幾度も幾

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 菊池寛 短篇と戯曲
  • 文芸春秋
  • 1988(昭和63)年3月25日