ていしゃばでかんじたこと
停車場で感じたこと

冒頭文

一 ある雨の降る日、私は友人を郊外の家に訪ねて昼前から夜まで話し込んだ。遅くなったのでもう帰ろうと思いながら、新しく出た話に引っ張られてつい立つことを忘れていた。ふと気づいて時計を見ると、自分が乗ることにきめていた新橋発の汽車の時間がだいぶ迫っている。で、いよいよ別れることにして立ち上がろうとした。その時またちょっとした話の行きがかりでなお十分ほど尻を落ち付けて話し込むような事になった。

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1917(大正6)年1月

底本

  • 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年4月10日