そうさくのしんりについて
創作の心理について

冒頭文

一 我々は創作者として活(はた)らく時、その創作の心理を観察するだけの余裕を持たない。我々はただ創作衝動を感ずる。内心に萌え出たある形象が漸次醗酵し成長して行くことを感ずる。そうして我々はハッキリつかみ、明確に表現しようと努力する。そこにさまざまの困難があり、困難との戦いがある。しかし創作の心理的経路については、何らの詳しい観察もない。創作の心理は要するに一つの秘密である。 し

文字遣い

新字新仮名

初出

「文章世界」1917(大正6)年1月

底本

  • 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年4月10日