じんぶつはにわのめ
人物埴輪の眼

冒頭文

埴輪(はにわ)というのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。用途は大きい前方後円墳の周囲の垣根であった。が、この素焼きの円筒の中には、上部をいろいろな形象に変化させたものがある。その形象は人間生活において重要な意味を持っているもの、また人々が日ごろ馴(な)れ親しんでいるものを現わしている。家とか

文字遣い

新字新仮名

初出

「世界」1956(昭和31)年1月号

底本

  • 和辻哲郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年9月18日