やくしまきこう
屋久島紀行

冒頭文

鹿兒島で、私たちは、四日も船便を待つた。海上が荒れて、船が出ないとなれば、海を前にしてゐながら、どうすることも出來ない。毎日、ほとんど雨が降つた。鹿兒島は母の郷里ではあつたが、室生さんの詩ではないけれども、よしや異土の乞食とならうとも、古里は遠くにありて、想ふものである。 雨の鹿兒島の町を歩いてみた。スケッチブックを探して歩いた。町の屋根の間から、思ひがけなく、大きくせまつて見える櫻島を

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「主婦之友」1950(昭和25)年7月

底本

  • 現代紀行文學全集 第五卷 南日本篇
  • 修道社
  • 1957(昭和33)年9月15日