ぐうぞうすうはいのしんり
偶像崇拝の心理

冒頭文

私がここに観察しようとするのは、「偶像破壊」の運動が破壊の目的物とした、「固定観念」の尊崇についてではない。文字通りに「偶像」を跪拝(きはい)する心理についてである。しかしそれも、庶物崇拝(フェティシズム)の高い階段としての偶像崇拝全般にわたってではない。ただ、優れた芸術的作品を宗教的礼拝の対象とする狭い範囲にのみ限られている。 特に私は今、千数百年以前の我々の祖先の心境を心中に描きつつ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1917(大正6)年4月

底本

  • 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年4月10日