きのこがり |
茸狩り |
冒頭文
松茸(まつたけ)の出るころになるといつも思い出すことであるが、茸という物が自分に対して持っている価値は子供時代の生活と離し難いように思われる。トルストイの確か『戦争と平和』だったかにそういう意味で茸狩りの非常に鮮やかな描写があったと思う。 自分は山近い農村で育ったので、秋には茸狩りが最上の楽しみであった。何歳のころからそれを始めたかは全然記憶がないが、小学校へはいるよりも以前であることだ
文字遣い
新字新仮名
初出
「思想」1936(昭和11)年11月号
底本
- 和辻哲郎随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1995(平成7)年9月18日