おぐらいけのはす
巨椋池の蓮

冒頭文

蓮(はす)の花は日本人に最も親しい花の一つで、その大きい花びらの美しい彎曲線(わんきょくせん)や、ほのぼのとした清らかな色や、その葉のすがすがしい匂いや肌ざわりなどを、きわめて身近に感じなかった人は、われわれの間にはまずなかろうと思う。文化の上から言っても蓮華(れんげ)の占める位置は相当に大きい。日本人に深い精神的内容を与えた仏教は、蓮華によって象徴されているように見える。仏像は大抵蓮華の上にすわ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1950(昭和25)年8月号

底本

  • 和辻哲郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年9月18日