いきることつくること |
生きること作ること |
冒頭文
一 私は近ごろ、「やっとわかった」という心持ちにしばしば襲われる。対象はたいていこれまで知り抜いたつもりでいた古なじみのことに過ぎない。しかしそれが突然新しい姿になって、活き活きと私に迫って来る。私は時にいくらかの誇張をもって、絶望的な眼を過去に投げ、一体これまでに自分は何を知っていたのだとさえ思う。 たとえば私は affectation のいやなことを昔から感じている。その点
文字遣い
新字新仮名
初出
「新小説」1916(大正5)年4月
底本
- 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
- 講談社文芸文庫、講談社
- 2007(平成19)年4月10日