『りゅうせいがしゅうおよびげいじゅつかん』について
『劉生画集及芸術観』について

冒頭文

自分は現代の画家中に岸田君ほど明らかな「成長」を示している人を知らない。誇張でなく岸田君は一作ごとにその美を深めて行く。ことにこの四、五年は我々を瞠目(どうもく)せしめるような突破を年ごとに見せている。そうしてこの成長、突破が年ごとに迫り行くところは、ただ偉大な古典的作品にのみ見られる無限の深さ、底知れぬ神秘感、崇高な気品、清朗な自由、荘重な落ちつきである。自分は正直に白状するが去年美術院の展覧会

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央美術」1921(大正10)年4月号

底本

  • 和辻哲郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年9月18日