「しぜん」をふかめよ
「自然」を深めよ

冒頭文

一 我々の生活や作物が「不自然」であってはならないことは、今さらここに繰り返すまでもない。我々は絶対に「自然」に即かなくてはならぬ。しかしそれで「自然」についての問題がすべて解決されたとは言えない。むしろ、問題はそれから先にある。 一体どれが我々の生活のドン底の真実なのか。どれをつかんだ時に我々は「自然」に即したと豪語する事ができるのか。 自然主義は殻の固くなった理想

文字遣い

新字新仮名

初出

「新小説」1917(大正6)年4月

底本

  • 偶像再興・面とペルソナ 和辻哲郎感想集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2007(平成19)年4月10日