すいごうやながわ
水郷柳河

冒頭文

私の郷里柳河(やながは)は水郷である。さうして静かな廃市の一つである。自然の風物は如何にも南国的であるが、既に柳河の街を貫通する数知れぬ溝渠(ほりわり)のにほひには日に日に廃れてゆく旧い封建時代の白壁が今なほ懐かしい影を映す。肥後路より、或は久留米路より、或は佐賀より筑後川の流を越えて、わが街に入り来る旅びとはその周囲の大平野に分岐して、遠く近く瓏銀の光を放つてゐる幾多の人工的河水を眼にするであら

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 南日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日