はじめてドストイェフスキイをよんだころ
初めてドストイェフスキイを読んだ頃

冒頭文

初めてドストイェフスキイを讀んだのは、何でも僕が二十七、八歳位の時であつた。それ以前によんだ西洋の文學は、主にポオとニイチェとであつた。その他にもトルストイなど少し讀んだが、僕にはどうもぴつたりしないので、記憶に殘るといふほどでもなく、空(から)讀にして通つてしまつた。後々迄も影響し、僕の文學的體質を構成するほど、眞に身に沁みて讀んだ本は、ポオとニイチェと、それからドストイェフスキイの三つであつた

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「ヴレーミヤ」1935(昭和10)年11月

底本

  • 萩原朔太郎全集 第九卷
  • 筑摩書房
  • 1976(昭和51)年5月25日