くじゃくぶね |
孔雀船 |
冒頭文
故郷の山に眠れる母の靈に 岩波文庫本のはしに 阿古屋の珠は年古りて其うるみいよいよ深くその色ますます美(うる)はしといへり。わがうた詞拙く節(ふし)おどろおどろしく、十年(とゝせ)經て光失せ、二十年(はたとせ)すぎて香(にほひ)去り、今はたその姿大方散りぼひたり。昔上田秋成は年頃いたづきける書(ふみ)深き井の底に沈めてかへり見ず、われはそれだに得せず。ことし六十(むそ)
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「孔雀船」左久良書房、1906(明治39)年5月
底本
- 詩集 孔雀船
- 岩波文庫、岩波書店
- 1938(昭和13)年4月5日