なんよびわこう
南予枇杷行

冒頭文

上り約三里もある犬寄(いぬよせ)峠を越えると、もう鼻柱を摩する山びやうぶの中だ。町の名も中山。 一つの山にさきさかつてゐる栗の花、成程、秋になるとよくこゝから栗を送つてくる。疾走する車の中でも、ある腋臭を思はせる鼻腔をそゝる臭ひがする。栗の花のにほひは、山中にあつてのジャズ臭、性慾象徴臭、などであらう。 南伊予には、武将の名を冠したお寺が多い。長曽我部氏に屠られた諸城の亡命者が

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 南日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日