みずとすな
水と砂

冒頭文

一 山荘の夜 「此処から足許があぶなくなりますから、みなさんご用心よ。」 彼等が、小流の畔に出ると、一ばん先に進んでゐた光代がかう言ひ棄てていきなり右へ折れた。驟雨に洗はれて空気の澄みきつた七月の初夜である。見あげれば少なからぬ星影は青く燦めいてゐるのであるが、此あたり一帯にすぐ背後に山を背負つてゐるために、闇は一しほに濃い。然し幸ひなことに砂みちであるので、その仄白さと、踏めばサラサ

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 雪の宿り 神西清小説セレクション
  • 港の人
  • 2008(平成20)年10月5日