ははたち
母たち

冒頭文

……無常の人間に知られずに隠れてゐて、わたし共も名を云ひたくない神です。 その家へ往くには、あなた余程深く摩(す)り込むのです。そんな物に用が出来たのは、あなたのせゐだ。             ——『フウアスト(ママ)』第二部 1 二つの死が私たちの結婚に先立つた。私たちは幼児の心を喪つた婚約者だ。しかし、もはや私たちのあひだには、胸をときめかす何の珍らしい期待もない、といふ君のことばは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文學界」1936(昭和11)年9月号

底本

  • 雪の宿り 神西清小説セレクション
  • 港の人
  • 2008(平成20)年10月5日