くろかげしゅうのじょし
『黒影集』の序詞

冒頭文

伝奇物語に興味を有する私は、折にふれて支那の随筆小説を読んだ。読むと云っても、もともと消閑の具としてであるから、意の赴くままに眼の行くままに読むと云う有様で、巻を追うて通読したと云う物は殆ど無いが、それでも長い時間の間には、かなり読んだ。そんなことで、時とすると怪譚に筆を著けることがあって、既に『怪談』と云う小冊子まで作っているが、雑駁で不統一で、どっちから云っても欠点だらけだし、その上、後からも

文字遣い

新字新仮名

初出

「黒影集」新生社、1921(大正10)年

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日