ひころくおおいにわらう
彦六大いに笑ふ

冒頭文

まへがき ホンの此の間まで、その一廓はチヤンと生きてゐた。 あれでも、全部では十軒位の店は在つたのであらう。ハツキリ記憶に在るだけでも、先づカバン屋、洋品店、文房具も売つている雑貨店、靴屋、昼間は薄暗い店先だが夜になると不意に「サツク及スキンいろいろ」と書いたネオンが灯る衛生器具屋、小さい炭屋、そこだけが此の一廓中で二階になつてゐる撞球場、その階下の小さい酒場が大通りの

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新演劇」1936(昭和11)年12月号

底本

  • 三好十郎の仕事 第一巻
  • 學藝書林
  • 1968(昭和43)年7月1日