じねつ
地熱

冒頭文

1 炭坑町の丘 (開幕前に、上手から下手奥へ列車が通過する轟然たる響が近づき、遠ざかつて行く。開幕後も音は残る。 町はづれの丘。上手が斜めに切通しになつてゐて、私設鉄道の線路の一部。線路に添つて街道。その間に木柵。——炭坑地特有の、何から何まで黒い風景。晴れた夕陽の空。遠い山脈。秋。 切通しを見おろす丘の上に此方を向いて腰をおろし、遠くに視線をやつているお香代。胸の辺で何かしてゐ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1937(昭和12)年 6月号

底本

  • 三好十郎の仕事 第一巻
  • 學藝書林
  • 1968(昭和43)年7月1日