はちがつのきりしま
八月の霧島

冒頭文

夜の汽車から浪に映る宮島の燭を見ようと思つてゐたが、旅の疲れですつかり眠つてしまつて、眼がさめたころは夜はすでに明けてゐた。中国特有の低い砂山の松の間には赤い百合の花が咲いてゐた。芒の穂につつまれた磯の、広い塩田には朝の露が重く、まだ人の影一つ見えなかつた。 静かな朝の入り江は、低い砂山をめぐつてさらに眠りからさめたばかりの静かな入り江へとつづいた。潮に沿うて露重げに夾竹桃が咲いてゐた。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 南日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日