おりき
おりき

冒頭文

信濃なるすがの荒野にほととぎす 鳴く声きけば時過ぎにけり          ——万葉東歌—— 八ヶ嶽の、雄大な裾野の一角。 草場と、それから此のあたりでカシバミと呼んでいる灌木の叢に取り巻かれた麦畑。黄色によく実った麦の間には既に大豆が一尺近く育っている。 麦畑の奥は向うさがりに広がっていて、此方から見えるのは、その極く一部分だけ。周囲の草場の一部は草が刈り込まれ、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「日本演劇」1944(昭和19)年3月号

底本

  • 三好十郎の仕事 第二巻
  • 學藝書林
  • 1968(昭和43)年8月10日