きゅうぶんにほんばし 17 ろうやのはら |
| 旧聞日本橋 17 牢屋の原 |
冒頭文
金持ちになれる真理となれない真理——転がりこんで来た金玉(かねだま)を、これは正当な所得ではございませんとかえして貧乏する。いまどきそんなことはないかもしれないが、私のうちがそれだった。 御維新のあとのごたごたが納まっても、なかなか細(こま)かしいことは何時(いつ)までも残っていたのであろう。転(ころ)がりこんで来た金玉を押返してしまった人たちが、ある日こんなことをいっていた。 「
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 旧聞日本橋
- 岩波文庫、岩波書店
- 1983(昭和58)年8月16日