はだのにおい
肌の匂い

冒頭文

1 それは、こんな男だ。 年齡二十六七。身長五尺四寸ぐらい。體重十五貫と十六貫の間。中肉でよく發達した、均整のとれたからだつき。顏は正面から見ると割りに寸がつまつて丸いが、横からだと面長に見える。鼻筋がすこし長過ぎる位に通つているせいか。色は白い、と言うよりも蒼白。ひどく冷たい感じの皮膚。頭髮豐かで、廣い額の、上の方が女にもめつたに無いクッキリとした富士びたいになつている。全體がま

文字遣い

旧字新仮名

初出

「婦人公論」1949(昭和24)年8月~1950(昭和25)年7月号

底本

  • 肌の匂い
  • 早川書房
  • 1950(昭和25)年11月10日