そのひとをしらず
その人を知らず

冒頭文

1 窓のないガランとした室。中央にテーブルと三四のイス。伴(軍服)がイスにかけて書類を見ている。壁の前に人見(セビロにゲイトル)が、棒のようにこわばって立っている。間——時計の秒刻の音。伴 (寝ぼけたような顔をあげて)人見。人見 は。伴 ツトムいうのかね、ベンかね?人見 ツ、ツトムで、あ、あります。伴 三十四歳。……独身か。家族は、妹だけか……妹だね、この治子というのは?人見 は。妹であります、は

文字遣い

新字新仮名

初出

「人間 別冊 人間作品集」1948(昭和23)年6月

底本

  • 三好十郎の仕事 第三巻
  • 學藝書林
  • 1968(昭和43)年9月30日